藤枝市郷土博物館・文学館が収蔵・展示する昭和時代の生活用品を活用し、高齢者の健康増進につなげようと開く「なつかし回想法 藤枝おもいでサロン」が人気を集めている。回想法は認知症の予防法として知られる。高齢者の生きがいづくりや社会参加へのきっかけになると出前講座の依頼も多く寄せられ、広がりを見せている。
10月下旬のサロンは「実りの秋」をテーマに開かれた。机上には昭和時代に使われた羽釜、おひつ、電気釜が並び、60~70代を中心とした参加者12人が自由に触れたり持ったりしながら談笑していた。
「学校から帰ると必ず、かまどや風呂炊き用のまきを拾いに山に行かされたっけ」「あの頃の外米はえらくまずかった」「母乳が出ないと米のとぎ汁をお乳の代わりに赤ん坊に飲ませただよ」
次々飛び出す体験談や昔話に会話が弾んだ。昔ながらの藁苞[わらずと]で包んだ納豆を炊きたてのご飯と味わう動画や、童謡の合唱なども交え、あっという間に1時間が経過し終了時刻になった。
回想法は、懐かしい暮らしの道具や写真、映像、音楽などを通して脳を活性化させて記憶を呼び覚まし、他人と語り合うことで心の安定につなげる。認知症のリハビリや介護予防だけでなく、自尊心を高めて生涯学習や社会参加を促し、QOL(生活の質)の向上が期待できる。
同館は2020年から毎月1、2回のペースで開催し、このほど50回を超えた。企画した同館学芸員の海野一徳さんは、博物館資料と回想法を結びつけた愛知県北名古屋市の先行事例を11年前に視察。「藤枝でも市民から寄贈された道具が約600点あり、“博福連携”(博物館における福祉との連携)に活用できればとの思いがあった」と話す。北名古屋市の理論や手法を学び、語らいの場で進行役を務めるボランティアを19年に1年かけて20人養成した。
保健師と看護師の資格を持ち、出前講座で高齢者施設にも出向くボランティアの高塚祐子さん(65)=藤枝市=は「薬と違って副作用がないし、上手に相づちを打って話を聞いてあげると相手の表情が生き生きする。知らなかった地元の歴史などを聞けるのも楽しい」と語り、自らの充実感もにじませる。
回想法を研究する中部大生命健康科学部の梅本充子教授(老年看護学)は「写真や映像だけでは視覚的な刺激しか受けられないが、実物があると触覚や嗅覚、聴覚も刺激され、思い出す力が増す。博物館資料を実践で使っているところに意義がある」と評価する。
海野さんは「人生の大先輩から聞く話は地域の貴重な財産。今後は記憶のアーカイブとして若い世代に継承していきたい」と抱負を語った。
(文化生活部・柏木かほる)
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