千葉県内で相次ぐ電話de詐欺事件で、「道具屋」が暗躍している。道具屋は、偽造身分証を使って金融機関の口座や携帯電話のSIMカードを不正に入手し、詐欺集団などに売りさばく犯罪グループだ。「東日本最大級」の道具屋が摘発され、闇に包まれた活動の一端が浮かび上がってきた。(河津真行)
「道具屋が売っているのは、電話de詐欺に不可欠なものばかり」。捜査関係者はそう憤る。「道具屋がいる限り詐欺はなくならない。絶対に許せない存在だ」と語気を強める。
偽造した運転免許証などを使って、金融機関からキャッシュカードをだまし取ったとして、千葉県警は昨年6月から今年4月にかけて、男女9人を偽造有印公文書行使や詐欺などの疑いで逮捕した。9人は「東日本最大級」とされる道具屋のメンバーだ。
千葉県内の複数の民泊施設では、室内から約1000枚の運転免許証と約920枚の健康保険証も見つかった。県警は、ほとんどが偽造だとみており、押収済みだ。民泊施設は、この道具屋の拠点として使われていた。
県警の調べでは、この道具屋は偽造した身分証を使って口座やSIMカードを不正に取得し、電話de詐欺などの犯罪組織に売っていた。価格は1口座あたり10万円、SIMカードは1枚あたり2万円ほど。少なくとも口座は500口、SIMカードは1300枚売り、数千万円以上を荒稼ぎしていたとみられる。
一般的に、口座は詐欺被害者からの振込先として悪用され、SIMカードは、だましの電話をかける「かけ子」の携帯電話などに悪用される。実際に、この道具屋が売った口座のうち、少なくとも170口座が詐欺事件で悪用された口座と一致していた。振り込みが確認された被害額は約13億円にのぼる。
この道具屋は、偽造した身分証で口座を取得する際、オンラインでの口座開設サービスを悪用していた。
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