真黒なキューブ状の物体
東京・麻布十番のレストランで、若手の料理人2人が腕を振るう試食会が開催された。堀内浩平、砂山利治の両シェフとも、日本最大級の料理人コンテスト、RED-U35で受賞歴を持つ実力派だが、この日の主役は、開放的な厨房に鎮座していた、真黒なキューブ状の物体。両手で抱えてみると、ズシリとした重みを感じる(8kg近くある)。実はこれ、カーボンを高温で熱して不純物を取り除いた純度99.9パーセントの炭、いわゆるカーボン・グラファイトの塊を削り出してつくった調理道具なのである。
この『ANAORI kakugama』を開発したのは、1962年に創業した大阪のメーカー、穴織カーボン。料亭『青柳』の3代目、小山裕久氏による日本料理の極意を取り入れて考案した。0.1mmの加工精度で実現した篏合設計や、複雑なアールの処理など、最先端の技術を駆使して作られた製品の美しさは、さながら美術品のようでもある。
男性に人気
もちろん、『ANAORI kakugama』が真価を発揮するのは調理時である。カーボン・グラファイトが発する高い遠赤外線の効果により、食材への火入れが素早く、素材へのダメージが少ない。結果、素材の旨味がギュッと凝縮された料理の仕上がりとなる。また優れた熱伝導性を持つことから、ムラのない火入れが可能となり、蓄熱性にも優れているため、熱源から器具を外しても、均一な温度を長時間、維持できるのである。ガス、オーブン、IHとすべての熱源に対応し、1台で炊く、煮る、蒸す、焼く、揚げることができるので、使い勝手もいい。
実際に試食会で料理を食べてみると、ラムと大豆の煮込みでは、ふっくらとした大豆に、ラムから引き出された上品な旨味が絶妙に絡み合い、ラ・フランスの丸焼きでは、果肉にしっかり果汁をとどめつつ、奥までしっかり火が入っているのが分かる。だが特筆すべきはご飯である。均一な熱伝導の効果により、お米が芯まで柔らかく、土鍋や羽釜で炊いたかのごとく、一粒一粒がしっかりと立っているのである。
2021年に開発されたこの調理道具、フランス料理の大御所、ティエリー・マルクスや、『銀座小十』の奥田透といった、世界中の有名料理人から支持されている。ちなみに価格も5.1リットル・サイズで41万8000円、3.4リットル・サイズで29万7000円と超一流だが、これほどの値段でありながら、一般家庭、とりわけ男性からのオーダーが多いという。
漆黒のカーボン・グラファイトが放つ重厚な存在感に、素材の科学的特性を最大限に生かした設計。これが世界に誇る、メイド・イン・ジャパンのクオリティである。
文=永野正雄(ENGINE編集部)
(ENGINE WEBオリジナル)
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