Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米スタンフォード大学の研究チームが開発し2019年10月に発表した「Optimizing Portrait Lighting at Capture-Time Using a 360 Camera as a Light Probe」は、ポートレート写真において、撮影時に被写体への光の当たり方を提案するツールだ。
通常の撮影では、被写体の周囲に1つ以上のライト(太陽光含め)を配置して、被写体の顔の明るい部分と暗い部分の分布を慎重に制御し撮影することで雰囲気が決まる。
例えば、プロなどがストロボ撮影時に使用するポートレートライティング(光の当て方)には以下のような手法がよく用いられる。
- レンブラント:被写体の上45度、左または右45度の位置から光を当てる。
- ループ: 上45度のかなり高い位置から光を当てる。
- バタフライ: 被写体の正面から打ち下ろすように光を当てる。
- スプリット:真横から光を当て、顔の半分を明るく、もう半分を暗くする。
- リム:被写体の後方から光を当てる。
その際に、どの角度や方向から光を当てると良い感じに撮影できるのかを事前に提案してくれるのが本ツールだ。
撮影者は、始めに被写体の顔の位置から360度カメラを使用して撮影する。取得した画像からシーン内の光のHDR環境マップが生成される。
次に、環境マップから現実的に可能であろう照明スタイルのギャラリーが提案されるので、撮りたい画像を選択する。
撮りたい照明スタイルを選択すると、方向転換ガイダンス画面が表示され、撮影者が被写体を中心に時計回りまたは反時計回りにどれだけ回転するかが表示される。撮影者が物理的にどこに動けば、選択した照明スタイルのように撮れるかを教えてくれる。
また、移動中の撮影者が調整できるように、現在のカメラビューと被写体の位置関係がどれだけ正しいかを示すリアルタイムフィードバックも提供される。
最後に、指定された位置からカメラで撮影すれば完了。
実験では、ラップトップに取り付けるWebカメラを現在のカメラビューに見立てたが、モバイルデバイスで完結するように、スマートフォンに取り付ける360度カメラで実装し実行が可能なように計算処理を軽くしている。
また、フラッシュなどの別の光源を持っている場合は、対象の照明との一致をさらに改善するために、被写体の顔の向きを決める方法も提案する。
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