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【私が愛する 暮らしの道具①】「コニカルビーカー」 匿名の中に見つける個性|あなたの静岡新聞 - @S[アットエス] by 静岡新聞

 かわいい形でも、絵が付いているわけでもないのに思わず「かわいい」と言ってしまう物がたまにある。小泉硝子製作所(東京都台東区)のピッチャーもそうだ。たたずまいがいいのだ。

小林硝子製作所のコニカルビーカー
小林硝子製作所のコニカルビーカー
日野明子さん
日野明子さん
小林硝子製作所のコニカルビーカー
日野明子さん

 正式名称は「コニカルビーカー」。化学分析に使う研究者は生活で使おうとは思わないだろうが、こちらは何のしがらみもないから気楽なものだ。
 コニカルビーカーを探してみると、同じような形の物が山ほど見つかる。計測するための道具なのだから、見た目だけでなく厚みや耐熱性なども国家規格で決められており、どの工場も規格に合わせて製造している。例えば、ちょっと厚くなっていたら「規格外」として扱われるのだから、存在そのものが真面目なことこの上ない。工業デザイナーの柳宗理(1915~2011年)は、こんなデザインのことを「アノニマス(匿名の)デザイン」と呼んだが、匿名の中に個性を見つけるのが楽しい。同じ規格で作っても、仕上がったものは各工場でなんとなく個性が出るから、ものづくりは面白いものだ。
 わが家で使っているコニカルビーカー。職人が溶けたガラスを竿[さお]に巻き付け、息を吹き込み作った物だ。きちっと作られているが、手吹きの微妙な揺らぎのようなものがどことなく感じられ気に入っている。コニカルビーカーは理化学ガラスという区分のガラスで120度まで耐えられるので、コーヒーロートを載せられるし、燗[かん]もつけられる。熱湯消毒で気持ちよく洗うこともできる。
 出来上がった物はクールだが、製造現場は灼熱[しゃくねつ]だ。日々暑さと闘いながら淡々とものづくりに精を出す、アノニマスな職人に感謝。
 (日野明子・「スタジオ木瓜」代表)

 ひの・あきこ 商社勤務を経て1999年に独立。問屋業、展示会企画、地場産業の助言などを行う。

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