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料理道具研究家が厳選した料理の7つ道具と便利グッズ - FOOD - Living

料理には道具が欠かせません。良質で使い勝手がいい道具が、料理上手にしてくれます。今キッチンに、なんとなく“間に合わせ”で買ってしまったものや、壊れないから買い換えていないだけのものなどで溢れているなら、見直してみませんか? 料理道具研究家・荒井康成さんのキッチンにお邪魔して、料理道具を見せていただきました。

長く愛用したい7つの料理道具

はじめに紹介するのは、毎日自炊しなくても必要になる包丁やまな板のほか、“これが揃っていれば料理に困らない”という視点で選んでいただいた7つ道具。

「いずれも高価なものを選ぶ必要はありません。長持ちするものやメンテナンスして使い続けられるものを選ぶと、買い換えなくてすむのでお財布にも優しいですし、廃棄など無駄にしなくていいメリットがあります。一方で、メンテナンスに時間がかかったり毎回やらなくてはならなくなってしまったりすれば、なかなか手が出ません。メンテナンスを気負わずにできて、ずっと使い続けられる、そんな道具を選ぶのがポイントです」(料理道具研究家・荒井康成さん、以下同)

1.木製の「まな板」

まな板には、さまざまな素材でできたものがあります。サクラやヒノキ、オリーブなどの木製をはじめ、樹脂製やゴム製のもの、さらに大きさやデザインもさまざまですが、荒井さんがもっともおすすめするまな板とは、やはり木製のものだそう。

木のまな板は、劣化しても削ればきれいになるのが最大のメリットです。本来は食材それぞれに適したまな板がありますが、家庭に何枚も置けないですし、“この一枚”と決めるなら、サクラヒノキで作られたものがおすすめです。サクラは油なじみがいいので肉料理向き、ヒノキは湿気に強くて匂いを吸収してくれるので魚調理に向いています。どちらも安価とは言えませんが長く使えるものなので、よく食べる食材から選んでみてください。また、イチョウのまな板は木が柔らかく、包丁の刃を傷つけないので、野菜料理に向いていますオリーブは硬いので、パンやチーズなどを切るといいでしょう」

2.研ぎやすいステンレス製の「包丁」

包丁は、「三徳包丁」といって刃先が尖っていないタイプのものが一本あれば、なんでも切ることができます。安いものから高いものまでありますが、こちらもやはりメンテナンスして長く使えるかがポイント。安価なものは刃が薄く、研いでも切れ味が長持ちしません

「我が家で使っているのは、平野レミさんのブランド『remy』のもの。『クロの包丁』という名前で刃が黒いので、食材が見えやすくて切りやすいのが特徴です。フッ素コーティングしてあり、切れ味のよさが長続きします。手入れもしやすいので、メンテナンスにも時間がかかりません」

ちなみに、もう一本なにか包丁を買うなら、パン切り包丁がいいでしょう。

「こちらのパン切り包丁は、岐阜県にある志津刃物製作所のものです。ステンレス製で柄と刃が一体型なので洗いやすくて劣化も少なく、シフォンケーキのような柔らかいものもきれいに切れる形をしています。パン切り包丁には刃渡り21cmくらいのものが多いのですが、こちらは16cmとかなり小ぶり。でも、実はこのくらいのサイズの方が収納に困りませんし、パンをカットするのにも充分なんですよ」

3.上から数字が見える「計量カップ」

料理に欠かせない計量カップは、oxo(オクソー)のアングルドメジャーカップです。

身を屈めるなどして横から見なくても計量でき、ml表記とtbsp(大さじ)表記があります。使いやすいのはもちろん、計量間違いも少ないので、料理に慣れていない人にはとくにおすすめです。ミニ・小・中・大の4サイズ展開で、大は1000mlまで測ることができます」

4.肉も魚も香ばしく焼ける鋳鉄製の「グリルパン」

メイン料理がおいしく作れるSKEPPCHULT(スケップシュルト)のグリルパンは、鋳鉄製のもの。重さはありますが、中華鍋のように振ることがないので気になりません。

「スウェーデンの老舗メーカー、SKEPPCHULTは、ヨーロッパでも人気のあるアイアンブランドです。鋳鉄は熱伝導率と蓄熱性が高いので、魚や肉がカリッと香ばしく焼けます。魚焼きグリルは洗うのが面倒で使いたがらない方もいらっしゃいますが、これなら熱いうちにざっと水洗いしてタワシでこするだけで、メンテナンスは終わりです。秋刀魚を焼いてもステーキを焼いても、おいしく仕上がります」

5.ひとつは持っておきたい「卵焼き鍋」

卵焼きの鍋には関西風と関東風の2種類あり、正方形のタイプは関東風。甘い厚焼き卵を焼くのに適している形です。フライパンよりもコンパクトなので、ちょっとした朝食のおかずもこれひとつで焼くことができます

「テフロン加工のものもありますが、銅製のものの方が短時間で加熱できて時短になり、ふっくらと焼き上がります。また、卵が滑らないのでひっくり返しやすいんです。価格もそんなに高くないので、ひとつあると便利ですよ」

6.シリコン製の「キッチンツール」

こちらは、鍋で有名なSTAUB(ストウブ)のしゃもじとペストリーブラシ。持ち手はアカシアの木でできていて、先端はシリコン製です。

「食品がくっつきにくく、見た目にもテンションを上げてくれるキッチンツールです。シリコン部分が柔らかいので盛りつけやすいですよ。ペストリーブラシの方は、先ほどのグリルパンにオイルを塗るときに使ったり、食材にソースやオイルを塗るときに使います」

7.グラスを拭きやすい「キッチンタオル」

7つ目に紹介するのは、Birdy(バーディ)のキッチンタオル。超極細マイクロファイバーにポリエステルを配合した布で、吸水性と耐久性に優れています

「一度これを使ったら他のものは使えないというくらい、優秀なタオルです。バーテンダーやソムリエの意見を聞いて開発したもので、グラスに毛羽や水垢が付着させることなく、ぴかぴかに拭けます。乾きも速く、お皿を拭いているうちにタオルがびしょびしょになる……ということもありません。長方形の大きなサイズは1枚2000円を超えるので、タオルとしては割高ですが、長く使えるのでぜひ持っておいていただきたいです」

できれば持っておきたい便利グッズ3種

続いて見せていただいたのは、荒井さんが使っていて便利だと感じている3つの道具です。なくても事足りるけれどあれば便利、という道具は、料理の時間を楽しませてくれるはず。

1.食材を集めやすい木製の「スクレーパー」

デザイナーの小泉誠さんがプロデュースするブランド、ambai(アンバイ)のスクレーパーは、国産のサクラでできています。

「パンの生地をまとめるときに使うこともありますが、細かく切った食材を集めるときにとても便利です。適度な厚みがあるので持ちやすく、食材をこぼさず鍋やボウルに運べます。残念ながら売り切れていて在庫が残っていないのですが、スクレーパーはひとつ持っておくといいと思います」

2.フライ返しの代わりに使う「パレットナイフ」

こちらは、本来はケーキにクリームをナッペするときに使うパレットナイフ。製菓でよく使われるものですが、荒井さんはフライ返しの代わりにしているのだそう。

「たまたま餃子店に入ったときに、パレットナイフで餃子をひっくり返しているのを見て、すごく使いやすそうだなと思って真似したのがはじまりです。刃がしなるので食材の底に入れやすく、餃子のほかにも切り身の魚などにも使えます。刃が薄いのできれいに食材をはがせますよ」

3.チンしたごはんが“炊きたて”になる「陶製の器」

最後に紹介するのは、陶器。ごはん用に作られたものではありませんが、荒井さんは残りもののごはんを電子レンジで加熱するときに使っているそう。

「陶器は電子レンジに強いので、レンジOKのもので蓋つきのものならなんでもいいと思います。プラスチック容器やラップのままチンするよりも蒸気がしっかりこもり、ふっくらと加熱することができます。何より、見た目にもおいしそうですよね。このまま食卓に出して、おひつのように使うことができます」

週に一度は行いたい、
使用頻度が高い「包丁」と「まな板」のメンテナンス方法

料理をする上でもっともよく使う包丁とまな板は、いい状態で使い続けるためにも、こまめなお手入れが必要です。といっても、研ぎ石で研ぐのはなかなか大変。

「砥石を使わなくても、シャープナーを何度か通せば充分切れ味が復活します。毎日料理する方は週末に研ぐ、くらいの感覚でよいでしょう。それでも切れ味が悪くなってきたら、研ぎ屋さんにメンテナンスしてもらいますが、こちらは一年に一度も行えば問題ありません」

まな板は、オリーブオイルをキッチンペーパーに染み込ませて、全体を拭いてお手入れします。サラダ油を使うと乾かず、べたついてしまうので、オリーブオイルで行いましょう。

「とくにサクラやヒノキなどの硬い木は、食材の油が入りやすいのでしっかりメンテナンスが必要。こちらも週に一度くらいのお手入れでいいでしょう。全体をオイルで拭いたら乾燥させておきます。普段のお手入れはこれで大丈夫ですが、黒ずんできたり汚れが気になってきたりしたら、サンドペーパーで軽くこすると、カビや汚れを削ることができます」

キッチンツールは見せる収納で乾燥させる

キッチンアイテムの中でも、木でできたまな板や鉄のフライパンなどは、湿気を嫌うものです。引き出しやシンク下に入れてしまうと湿気がこもるので、見せる収納がおすすめ。

「いつも乾燥させておくとカビも生えにくく、いい状態を長くキープすることができますよ」

「鉄のフライパンも湿度があると錆びてしまうので、なるべく出しておきましょう。もししまう場合も、洗ったあとに加熱してしっかり乾燥させてからしまいます」

「包丁はマグネットにくっつけて収納するパターンもありますが、刃が出ているとうっかり手を切ってしまいそうで不安なので、包丁立てを使っています。お好みですが、危なくない収納の仕方を選んでみてください」

いつもきちんとメンテナンスされている、手に合った道具があるだけで、料理は格段に上手になり、それが時短にもつながります。忙しい毎日だからこそ、良質な道具で手軽においしいごはんを。道具を少しずつ見直して、揃えてみてください。

Profile

料理道具研究家 / 荒井康成

洋菓子店店長、和陶器店主を経て、フランス陶器エミール・アンリ社の日本法人設立に携わる。以後、日本初の「料理道具コンサルタント」として独立し、各食情報誌でのコラム執筆やスタイリング撮影、映像制作、専門学校講師など多岐に渡り活動中。著書に『ずっと使いたい世界の料理道具』(産業編集センター) 。
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取材・文=吉川愛歩 撮影=荒井康成 編集協力=Neem Tree

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