10年以上前、高知市のカフェで小さな竹のさじを買った。小さかった息子が何年も使い続けて割れてしまったが、子どもの手でも握りやすく、モダンで親しみやすい形が印象に残っていた。さじの作者で、高知市鏡地区の山あいに工房を構える下本一歩(かずほ)さん(43)を訪ねた。
下本さんの工房は鏡川をさかのぼった山あいにある。父方の祖父母の家があったなじみ深い土地で、当初は炭焼き職人を目指して23歳の時に炭焼き窯を設けた。炭焼きの傍ら、竹炭の材料でもあった竹を削ってつくった道具が想像以上に評判を呼んだという。
地元の放置林から自ら竹を伐採し、炭焼き窯で約1週間いぶす。竹の水分が抜けて材が腐りにくく丈夫になり、防虫効果も加わるという。竹製品には主に肉厚のモウソウチクの材を使い、トングやお玉、しゃもじや箸など約60種類を削り出していく。
竹の特性を生かしながら、道具としての機能性を追求している。お玉の頭部分は竹の節の部分から一個一個削り出し、柄には角張っていて手になじみやすい形のシホウチクを使っている。いぶした竹のつややかな黒さも、ほかの竹製品にはない魅力だ。
作品の人気が高まるにつれ、注文をさばききれなくなっていた下本さん。この6月に「株式会社 竹と」を設立し、現在は4人のスタッフとともに人気の竹製品を増産している。
下本さんは「山に捨てられているような材料を使い、端材も土に返っていく。環境に負荷をかけない体制でものづくりができているのが良さ」と話した。(藤家秀一)
◇
下本さんの竹製品は「日日(にちか)」(高知市葛島1丁目)や「土佐和紙工芸村くらうど」(高知県いの町鹿敷)、「まなべ商店」(愛媛県四国中央市豊岡町長田)などで取り扱っているほか、インターネットで販売する雑貨店もある。
from "道具" - Google ニュース https://ift.tt/m2Hncpe
via IFTTT
Bagikan Berita Ini
0 Response to "放置された竹林生かし、暮らしの道具を削り出す 下本さんの竹製品:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル"
Post a Comment