
比嘉展玖
(11日、高校野球西東京大会2回戦、都武蔵0―18片倉)
気温は30度を超えた。グラウンドは刺すような日差しと湿気。
都武蔵のベンチで、丸山葉央さん(3年)は守備に向かう選手に声をかけた。励ましではない。守備位置についてのアドバイスだ。「暑いなか頑張っているのは分かっている。だから『がんばれ』なんて言えなかった。具体的にどう守るかを伝えた。最後まであきらめたくなかったから」
丸山さんは都武蔵で唯一の女子部員だ。ポジションはセカンド。「チームで一番守備がうまいのは丸山。大会規定で出せないのが惜しい」と勝部舜也監督。記録員としてベンチ入りした。出場できないのは最初から分かっていた。それでも、このチームで野球がしたかった。
2人の兄が少年野球をしていた。練習に付いていっては、「私もやってみたい」。兄をまねて小学4年で野球を始めた。兄と同じ少年野球チームで練習に励んだ。中学でも野球を続けた。公式戦にも出た。
高校では野球をするつもりはなかった。母の麻子さんにもこう言われた。「野球以外でやりたいことあるならやっていいのよ」。娘を縛り付けているのではないかという後ろめたさがあった。野球道具は捨てた。
丸山さんは都武蔵に進学後、野球部を見学した。仲の良さが印象に残った。ムードメーカーの遊撃手小林悠真(3年)、チームメートへの目配りを欠かさない主将でエースの有川紘樹(3年)……。全員でお互いを鼓舞するチーム。一緒に野球がしたいと思った。
この日、二回から守備が崩れた。0―18の五回コールド負け。最後の打者が三振で倒れても、涙は出なかった。むしろすがすがしかった。「このチームで野球ができて楽しかった」
高校入学時の思いは、最後まで変わらなかった。「チームメートの好プレーに気が引き締まる。『自分も』と持っている以上の力が出せるんです。だからやっぱり野球が好きです」=多摩市一本杉(比嘉展玖)
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