順調に稼働を続けるアイデアボックスサイト
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が2020年10月9日に「デジタル改革アイデアボックス」を公開、10月15日から本格稼働を開始して1カ月ちょっとが経過した。
今、この原稿を書いている11月20日時点で投稿アイディア数は3,938件で、そのコメント数は1万1,242件ある。投稿やコメントができるユーザー登録数は3,812人だ。これらの数字はリアルタイムで更新されている。毎日100件程度のアイディアが投稿されている計算で、なかなかうまくいっているようにみえる。TwitterやFacebookなどのSNSとも連携することができ、今風のトレンドにマッチさせようと懸命のようだ。
このサイトは、デジタル改革に関する国民のアイディアをWeb上で広く募集し、政策立案に活かすために作られたものだ。投稿されたアイディアはすべて公開される。
パブリックコメントとは異なり、他者の意見に対してコメントができて、投票的な意味合いを持たせることもできる。コメントなどで議論が荒れるようなこともないようで、おそらく官僚であるだろうなかの人がどんな努力をしているのか知る由もないが、うまく運営できているように見える。
匿名ながら、生活者・事業者の声、IT業界の声、自治体職員の声、省庁職員の声、その他と、カテゴリ分けされ、内外から広く意見を募集しようという姿勢だ。
平井卓也内閣府特命担当大臣((マイナンバー制度)、デジタル改革担当、情報通信技術(IT)政策担当)と投稿者らのオープンな対話も実現され、すでに3回の座談会が実現されている。
先般、話題になったパスワード付きZIPファイルの廃止案なども、このサイトで生まれた提案が実現されたものだ。これは省庁職員であるニックネーム モグラ氏の投稿による提案で、暗号化した添付ファイルを送り、その直後にパスワードがメールで送られてくるPPAPと呼ばれる日本特有のメールの悪慣習を断ち切ろうというものだ。
個人的には行政文書の年月日表記を西暦表記ベースあるいは和暦との双方での表記にしてほしいという提案なども気になるところだ。デジタルとは無関係の話かもしれないが、昭和、平成、令和を使い分けるのはたいへんだし、デジタル化のハードルを少しかもしれないが上げてしまう可能性もある。
デジタル庁新設に向けて
平井大臣は、現在、おおむね週に2回、定例の記者会見を開催し、報道陣に対して直近の改革進行について報告している。毎回は厳しいが、個人的にもできるだけ出席するようにしているが、その会見でも、アイデアボックスで圧倒的な支持を得ている提案は実行に移したいと大臣は明言している。平井大臣は、おかしいものは見直すことが必要で、何がこの時代にふさわしいのか、みんなでアイディアを出していかなければならないとする。
今、政府は来春のデジタル庁の設立に向けて作業を進めているが、大臣の言葉を借りれば、「壁はめちゃめちゃ厚い」ということらしい。省庁の縦割りが当たり前のようにあるなかで、新庁の設立にさいして、以前の文化を残してしまう可能性が高く、そこをご破算にする方法を考える必要があると平井大臣。
要するに新庁を設立するにあたっては、霞が関の官僚と民間の混成チームになるのは必至となり、そのために、あちこちから人が集まり、官僚のみならず、そこに民間の人材も混じることになるのだが、霞が関の文化を継承している組織に、民間が入ると、とてもややこしくなる。つまりろくなことがない。
だが、そうならないようにしなければならない。それを回避するにはどうすればいいかを迷いながら考えているということだ。強引にでもやらなければならないし、最初に作る組織の文化は非常に重要で「そこが私のがんばりどころ」と大臣は自分自身の心情を露わにする。
国のデジタル化に参加
デジタルのいいところは迅速性と正確性、その情報共有だと平井大臣は言う。デジタル庁でもインフォメーションシェアリングについて主導していきたいとし、もっともデジタル化が威力を発揮するオープンデータの利活用など、さらに勉強して、取り組んでいきたいと抱負を語る。
また、期間限定の予定だったアイデアボックスサイトについては、常設の検討に入っているとも言う。今後、サイトのUI、UXをどうすればいいかを考えているところで、時間があるかぎりオープン対応したいとする。すばらしい人材を発掘するにもアイデアボックスはいいなと思いはじめたということだ。
実は、この原稿を書いている今日の午前中にも記者会見が開催されたのだが、そこでパスワードつきZIPファイルの件の流れで、政府から公開される文書がPDFであることの意義について質問してみた。
多くの文書がPDFで公開されているが、どれもがA4タテ用紙前提となっている。ところが、それを読むにあたっては、ほとんど印刷されず、パソコンやタブレット、あるいはスマートフォンの画面上で読まれている。つまり、画面サイズ、横長、縦長がまちまちだ。
なのにA4タテの用紙を前提にした文書は時代にそぐわない。PDFリーダ側でも、折り返し表示や、Liquid Modeの導入などで閲覧体験の向上を目論んでいるが、Wordでも一太郎でも、少なくともPDFを作ったオリジナルのファイルを公開するだけで状況は大きく変わる。
元のファイルがあれば、自分の好きな文字サイズ、フォントなど任意のフォーマットにして文書が読める。A4タテ用紙前提の文書配布では誰もトクをしない。せっかくの文書が、読みにくさから熟読されないのではもったいないのではないかと日頃から考えていた。
その質問への直接の見解を得ることはできなかったが、大臣からはぜひアイデアボックスに投稿してほしいと言われた。常々思っていることなので、せっかくだから投稿してみた。
ほんの少しの積極性が持てれば、国のデジタル化に参加できる。そういう意味では、選挙よりもずっと自分の意志をかたちにできそうにも思う。
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