新型コロナウイルスによる休校の影響で、大学入試の日程の変更などが検討されている。
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大学入試はいつ行われるか? 出題範囲は狭まるのか? 推薦入試やAO入試の出願時期はどうなるのか?
大学受験を控える高校3年生からは、不安の声が上がっている。
文部科学省では、新型コロナウイルスによる長期休校などの影響を考慮し、大学入試の時期を後ろ倒ししたり、入試の出題範囲を限定したりする案について検討している。
同省では全国高等学校長協会に対しアンケート調査を実施し、その結果も踏まえ、6月中に入試の日程や方法を発表するとしている。安倍首相も6月8日の衆院本会議で、「今月中に方針を示す」と答弁した。
一方、専門家からは、「突然降ってわいた9月入学の議論によって、入試などの検討が遅れた」という指摘もある。
受験生「登校は週3日。授業は遅れる一方」
6月に登校が再開されたものの、学習の遅れから入試への不安を募らせる受験生も少なくない(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
「6月から登校が再開され、現在は週3回分散登校で半日だけ授業を受けています。短縮授業のため本来の半分程度しか進まず、未だに対面での授業ができていない科目もあります。授業は遅れていく一方です」
東京都杉並区の都立高校に通う高校3年生の女子Sさん(17)は、受験生として不安を抱えながら学校生活を送っている。
休校期間中だった3、4月はプリントを各自でこなし、5月からは解説動画が配信された科目もあった。
「配信はあっても、私立のような双方向のオンライン授業はありません。公立と私立でICT環境の格差が著しく、授業の差に焦りを感じています。
塾の授業もネット配信されましたが、もともと映像での授業を想定していない塾だったので、正直受講しにくかった。スマホアプリで学習できる『N予備校』などの授業に切り替えました」
Sさんが望んでいるのは、高校での教育の質と時間を確保することだ。
「ただでさえ初の大学入試共通テストで不安が大きかったのに、コロナの影響で不明確なことがさらに増え、困惑しています。
入試の時期にせよ範囲にせよ、できるだけ早く方針を決定してほしいと思います」
3月から始まった一斉休校。文科省の調査では、4月16日時点で、公立の小・中・高校と特別支援学校などで、オンライン授業を実施している学校は5%。Sさんの学校のように多くの学校、特に公立校ではプリントなどによる自学が中心だった。
さらに大学入試については、2020年1月を最後に大学入試センター試験は終了。現在の高校3年生らが受験する、2021年1月から、新たに「大学入学共通テスト」が始まる。共通テストをめぐっては、当初予定していた、国語と数学での記述式問題の導入、英語での民間試験の利用が見送られるなど、これまでも高校生を翻弄してきた。
「差し迫った問題が先送りに」
日本大学の末冨芳教授。入試日程が未だに決まっていない点を問題視している。5月に行われた記者会見で撮影。
撮影:横山耕太郎
「9月入学の議論に時間を割いてしまったことで、大学入試をどうするのかという差し迫った問題が先送りにされてしまいました。安倍総理が9月入学を検討すると言った以上、文部科学省も対応せざるを得なくなりました」
日本大学文理学部の末冨芳教授はそう指摘する。
末冨氏は拙速な9月入学の導入に反対するため、NPO法人代表らと「 #9月入学本当に今ですか?プロジェクトチーム」を結成。5月中旬から署名運動を始め、署名の協力者は5500人を超えた(2020年6月8日現在)。
末冨氏が問題視しているのは、入試の時期や内容について、詳細がまだ発表されていないことだ。
現在高校3年生の受験日程は、総合型選抜(旧AO入試)の出願は9月、学校推薦型選抜(旧推薦入試)の出願は11月、大学入学共通テストは2021年1月16日、17日に実施予定だった。
仮に12月以降に合格発表される学校推薦型選抜を遅らせた場合、大学入試共通テストまでの時間が短くなり、推薦から一般入試への切り替えが難しくなるなどの影響が出てくる。
「9月入学にリソース割かれた」
入学者選抜実施要項は、2019年は6月4日発表されているが、2020年は発表が遅れている。
撮影:横山耕太郎
推薦入試を含めた日程を定める「大学入学者選抜要綱」は、2019年は6月4日に公開されたが、今年はまだ公開されていない(2020年6月8日現在)。
「夢物語のような9月入学論への対応に文部科学省や大学・高校関係団体のリソースが割かれてしまいました。
本来すべき入試などへの現実的な対応を急ぐことが、政治的に許されなかったことに、選抜要綱が遅れている根本的な原因があると思います」(末冨氏)
9月入学を検討していた自民党ワーキングチームがまとめた案では、入試時期について「2週間から1カ月程度後ろ倒すことを検討すべきである」と提案している。
しかし、2019年度のセンター試験の受験者は55万人超。2021年も何十万人もの受験生らが参加するとみられる共通テストの延期は簡単ではないという。
「1月は共通テスト以外にも国家試験などもある。会場運用が困難な大学もあり、共通テストの会場をこれから確保することは簡単ではありません。
感染予防として、受験生の間隔を広めにとるとすれば、例年より大きな会場が必要になる可能性もあります。
そもそも2週間延期した場合、今度はインフルエンザの流行のピークに重なるという懸念もあります」(末富氏)
日程の変更、費用負担の問題も
試験範囲を限定する案についても「理解を得るのは難しいのでは」と末冨氏は話す。
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末冨氏は、日程変更で生じた費用負担をどうするのかも問題になるという。
「私立大学にとって会場の提供は収益源にもなっています。共通テストの日程をずらせば、玉突きで別の試験にも影響がでる。他の試験ができなくなった場合の費用補償はどうなるのかという問題があります」
試験の出題範囲を限定することで、学習の遅れに対応するべきだという意見もあるが、それにも課題があるという。
「高校によって授業の進度は全く違います。休校が少なかった地域と、休校がずっと続いてきた地域があります。
また私立の進学校では高校2年生までに3年分の内容を学び終える学校もありますし、浪人生のことも考えないといけません。一律に出題範囲を狭めて試験を行うことは、理解を得にくいと思います」(末富氏)
今後、新型コロナの感染の第2波、第3波が来た場合の対応策も必要だが、まだ方針は出ていない。
「受験生が安心して試験を受けられるようにするのが最重要で、9月入学を議論している場合ではありませんでした。
安倍首相は9月入学について、『継続して検討する』と含みを残していますが、賛成論と反対論の分断が続く懸念もあります。今はコロナに向かって国民が一丸となって立ち向かう時だと思います」(末冨氏)
「官僚も政治家も時間は有限」
衆議院銀会館で取材に応じた自民党青年局長の小林史明氏。
撮影:横山耕太郎
9月入学の議論では、自民党内からも拙速な導入に対して反対の声が上がった。
衆議院議員の小林史明・自民党青年局長(広島7区、当選3回)はこう話す。
「9月入学の議論は当初、コロナで学校に行けない状況で、どのように学びを補償するかというのがスタート時点だったはずです。しかし検討を進めたところ、9月入学への移行には待機児童が増えるなどの多くの課題があることが分かりました」
小林氏は9月入学の議論が本格化していた5月22日、賛同する党内議員61人の連名で、岸田文雄政調会長に対し、9月入学の拙速な導入に対して反対する要望文を手渡したことで注目された。
「官僚も政治家も時間は有限なので、リソース配分を考えないといけない。
9月入学と教育改革を絡めた議論がされるようになっていましたが、そもそも9月入学と教育改革はつながっていません。
学びの補償策として選択できないと判明した時点で、9月入学の議論はもっと早く切り上げてよかったと思っています」
一方で小林氏は、学びの補償の先にある、本質的な教育改革の議論も進める必要性があるという。
「新型コロナによって教育のICT化の遅れが露呈しました。これまでなかなか実現しなかった、1人1台のデジタル端末の整備がやっと進む。そうなれば、一人ひとりの理解度にあった教育ができるようになる。
将来の教育改革を見据えつつ、まずは受験の問題など喫緊の課題に対し、迅速に柔軟に対応していかないといけません」
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June 09, 2020 at 10:02PM
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大学入試いつになる?翻弄され続ける受験生。9月入学議論で対応の遅れ指摘も - Business Insider Japan
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