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<新お道具箱 万華鏡>江戸糸あやつり人形・結城座 糸ならではの柔らかさ:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

「糸を操ることは難しく、最初は不安定。でも、習得すると人形が自由になり糸特有の表現ができるようになります。先人たちが考えだし洗練させてきた、すごい仕組みです」と十三代目結城孫三郎さん=東京都小金井市の結城座稽古場で

「糸を操ることは難しく、最初は不安定。でも、習得すると人形が自由になり糸特有の表現ができるようになります。先人たちが考えだし洗練させてきた、すごい仕組みです」と十三代目結城孫三郎さん=東京都小金井市の結城座稽古場で

 「糸でないと出せない柔らかさがあります」

 「なぜ糸で操るのか?」とたずねた時、結城孫三郎さんは、熱を込めてそう語った。

 「結城孫三郎」は、江戸糸あやつり人形・結城座の座長の名前。江戸時代の寛永12(1635)年に初代が江戸・日本橋で劇団を旗揚げして、今は十三代目となる。練り上げられたその芸は「国記録選択無形民俗文化財」「東京都の無形文化財」に指定されている。

人形を動かす仕組み(結城座提供)

人形を動かす仕組み(結城座提供)

 人形芝居というと人形浄瑠璃文楽を思い浮かべる人が多いだろう。3人で1体の人形を直接触って操る。一方、結城座では1人で1体を扱う。その大きな特徴は、糸。人形遣いは、たくさんの糸をまとめた手板(ていた)と呼ばれる操作板を手に持ち間接的に人形を動かす。そして自分で台詞(せりふ)も言う。

 人形の大きさは、60~80センチくらいで、樫(かし)と竹などで作られる。男と女では構造が異なっており、女の胴には空洞がある。少し不安定になるが、これによって柔らかな動きが表現できるという。

 「女の人形を扱うほうが難しい。だから最初は男の人形から練習をします」

「伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の場」で八百屋お七の人形を遣う十三代目結城孫三郎さん=2022年、撮影・石橋俊治

「伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の場」で八百屋お七の人形を遣う十三代目結城孫三郎さん=2022年、撮影・石橋俊治

 人形の糸は、基本は17、18本。このうち肩につけた肩糸2本とおでこにつけた頭糸(ずいと)1本で人形を支える。この3本を指で触ってみるとピーンと張っていて確かに人形を吊(つ)っていることがわかる。「きき糸」という。それ以外は、操作するための「遊び糸」で、少し緩みがもたせてある。

 おもしろいのは頭を自在に動かすことができるチョイという糸。人間はしゃべるときに頭を微妙に動かすものらしい。この糸で頭を動かすと、人形がいかにもしゃべっているように見える。「息づかいの糸というんですよ」と孫三郎さんは言った。

 長く受け継がれた技を未来につなぎたい。結城座では現在、座員を募集中だ。人形遣いだけでなく、人形製作の仕事もある。詳しくはウェブサイトを。 (伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

◆公演情報

「変身」 5月29日~6月2日、東京都世田谷区のザ・スズナリ。原作=フランツ・カフカ、脚本・演出=シライケイタ。出演は結城孫三郎、両川船遊ら。予約は結城座=(電)042・322・9750。

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