10月上旬、ニューヨーク州グレンフォールズの消防士たちは、「家が燃えている」という通報を受けた。しかし、それは実際には火事ではなく、LEDライトと布、霧吹き、そして扇風機を使った、非常に手の込んだハロウィン装飾だったのだ。
この“ニュース”は、夜のローカルニュース番組を締めくくるためのネタを生成するように指示された、生成AI(Generative AI)がつくったストーリーに思えるかもしれないが、本当の話だ。米国の公共ラジオ放送であるNPRでも伝えられたが、NPRのおかげで広まったわけではない。
どちらかというと、大量の再生回数を稼いだTikTok動画のほうが周知に一役を買ったと言える。TikTokには、火事を模したハロウィンの装飾の動画が無数に投稿されているからだ。「house on fire Halloween decoration(家が燃えているハロウィン装飾)」という説明に当てはまる動画の再生回数は、およそ1億4,000万回に達しており、信じがたいレベルである。
楽しい話に水を差すようで申し訳ないが、TikTokでバズっているハロウィンの飾り付けは度が過ぎているように思う。家が燃えているように見える装飾のほかにも、ドラマ「オフィス」のマイケル・スコットを真似たジャック・オー・ランタンや、ホラー映画を代表するキャラクターたちのシルエットが投映されていたり、レイブ風の照明で飾り付けられたりしているのだ。
こうした投稿は、数千、もしくは何百万回も再生されている。そして、クリエイターたちは、ド派手な装飾のハウツー動画を投稿することで、さらに多くの「いいね」を獲得しているのだ。
バズりを狙った装飾
ハロウィンの時期に消防隊が“飾りつけの現場”に派遣されたのは、今年が初めてではない。17年には、テネシー州警察は、ガレージのシャッターの下敷きになっている死体のようなものを見ても通報しないよう、Facebook上で呼びかけなければならなかった。
また、20年には、カリブの海賊をテーマにした装飾をしたロサンゼルスの家に消防隊が出動している。テキサス州に住む男性は、偽のバラバラ死体を大量に使った庭の飾りつけで、TikTok上の名声と悪評を手にした。
しかし、こうしたトレンドはこのごろ変化しつつある。一風変わった飾り付けを見つけた誰かがSNSに投稿するのではなく、最初からSNSで目立つことを意識してハロウィンの装飾がつくられているのだ。
こうした飾り付けは、注目されることを目的に大量生産されると、それが本来もっていた意味や信憑性が失われてしまう。そもそも、注目をされる理由となっていた根拠がなくなるのだ。すべてがバズるための行動となってしまうとしたら、目的がずれてくる。
そんななか登場するのが「ルイス」だ。秋にさしかかったころ、TikTokは、ローブを身にまとったおよそ2メートルほどのカボチャを米国の小売店「Target」に買いに行く動画で溢れかえっていた。そんなルイスには「わたしはジャック・オー・ランタンではない。わたしの名はルイスだ」というキャッチフレーズがある。
180ドル(約27,000円)もするハロウィンの悪霊は、早々に売り切れた。ルイスは陽気でかわいげがあり、パンプキンスパイスラテを飲みながらクスッと笑えるいいものだったが、ひとつだけ難点がある。Targetはルイスをバズらせるために、プレスリリースで彼の画像を投稿するよう促したのだ。「ルイスは今年のハロウィンの装飾でいちばん注目されるに違いありません」と、書かれている。
単なるミームとなってしまったイベント
ラッパーのリル・ジョンの曲とシンクロするクリスマスの装飾がYouTubeで流行していたのは数年前だが、いまは派手なハロウィンの装飾をTikTokに投稿すれば、インターネットで手っ取り早く有名になれるようになってしまった。
これは別に悪いことではない。だが、小道具だと思って死体に気づかなかった管理人の話を同じスマートフォンの画面上で目にすると、ゾッとしてしまう。
単なるわたしの過剰反応なのかもしれない。もしかしすると、いまのインターネットが精神的な負担になっていて、「楽しい」ことを楽しむことに罪悪感を感じている可能性もある。
それでも、かつてはネットミームがハロウィンコスチュームの元ネタとなっていた時代もあった(これは「HallowMeme(ハロミーム)」として知られ、ものすごい熱気だった)。しかし、いまとなってはハロウィンそのものがミームとなっている。TikTokに投稿される偽の家事や、庭に飾られている骨などがその好例だ。これは面白くもなんともない冗談で、そのジョークの名は「ルイス」である。
(WIRED US/Translation by Naoya Raita)
※『WIRED』によるTikTokの関連記事はこちら。ハロウィンの関連記事はこちら。
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