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14色のペン:権力者に近づく道具 安倍元首相のゴルフ接待、森鷗外は… - 毎日新聞

米南部フロリダ州でゴルフを楽しむ安倍晋三首相(左)とドナルド・トランプ米大統領=2017年2月11日(内閣広報室提供)
米南部フロリダ州でゴルフを楽しむ安倍晋三首相(左)とドナルド・トランプ米大統領=2017年2月11日(内閣広報室提供)

 文豪・森鷗外の没後100年だった2022年は、各地でさまざまなイベントが行われました。年は越しましたが、森鷗外記念館(東京都文京区)で今月29日まで開催されている特別展「鷗外遺産~直筆資料が伝える心の軌跡」に興味深い新発見資料が展示されています。鷗外宛ての書簡に書かれているのは、元勲・山県有朋が趣味について語った言葉です。【論説室・野口武則】

 何を仕掛けてくるか予測が困難だった超大国の指導者・トランプ前米大統領。その懐に飛び込もうと安倍晋三元首相が利用したのが、共通の趣味であるゴルフだった。過剰ともいえる歓待ぶりは「ゴルフ接待」とやゆされた。産経新聞の社会部記者らは賭けマージャンを通じて検察幹部と親密になった。

 権力者と近づくために共通の趣味を道具とするのは、今も昔も変わらない。

 明治・大正の元勲・山県有朋は和歌を好んだ。親友でありライバルでもあった元首相・伊藤博文が暗殺された際に読んだ歌が、昨年の安倍氏「国葬」で話題になったのは記憶に新しい。

 その山県を囲む歌会があった。1906(明治39)年に発足した常磐(ときわ)会である。幹事役の一人が鷗外だった。会に箔(はく)を付けるため権力者の山県が著名作家を招いたのなら、名前通りの歌会だろう。ただ、話はそう単純ではない。

 鷗外の本職は陸軍医で、作家と二足のわらじを履いた。九州・小倉への異動を本人が左遷と受け止めた時期もあったが、会が発足した直後に陸軍医として最高位の軍医総監に昇進している。陸軍に強い影響力を持つ山県と和歌を通じて親密になったことが、鷗外の強力な後ろ盾となったことは確実だ。

 では、会の発案者は誰か。2022年に出版された3冊の新書は見解が分かれる。

 「(日露戦争から)凱旋(がいせん)後の鷗外の、軍医の組織における位置を心配した賀古鶴所(かこ・つるど、鷗外の親友である陸軍医)は、鷗外を陸軍の長老・山県有朋と接近させることを狙って、歌会を定期的に開くよう計画する」(「森鷗外 学芸の散歩者」中島国彦、岩波新書)

 「鷗外は山県有朋侯に依頼され『常磐会』を結成し、賀古と鷗外が発起人で月1回開催することにした」(「森鷗外 よみがえる天才8」海堂尊、ちくまプリマー新書)

 「(鷗外は)山県有朋から信頼され、明治39年には彼の意を受けて歌会、常磐会をおこし、幹事をつとめています」(「森鷗外、自分を探す」出口智之、岩波ジュニア新書)

 参加者の証言が時を経て変遷したり、あるいは人により食い違ったりするため、研究者の間で論争になってきた。大まかに、山県側とする説と、鷗外側(賀古との協力も含む)とする説に二分できる。

 山県説であれば、本来の歌会の意味合いが濃くなる。一方、鷗外説に基づくと、趣味を通じて陸軍の実力者に近づこうとする政治工作の意味を帯びてくる。

 作家としての鷗外像を描くか、それとも昇進や栄典と無関係ではあり得ない官僚としての鷗外像に重きを置くか。どちらの説を取るかは、多面性を持った鷗外という人物を、描く側がどう見ているかが問われる。

 ところが、近年新たな発見があった。…

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