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患者は利益優先の「道具」 精神科病院の虐待 第三者委が報告書 - 毎日新聞 - 毎日新聞

神出病院の虐待事件についての調査結果を報告する第三者委員会の藤原正広委員長(手前から2番目)ら=神戸市中央区で2022年5月2日午前10時53分、巽賢司撮影 拡大
神出病院の虐待事件についての調査結果を報告する第三者委員会の藤原正広委員長(手前から2番目)ら=神戸市中央区で2022年5月2日午前10時53分、巽賢司撮影

 入院中の男性患者同士に無理やりキスをさせるなど、看護師らによる虐待事件があった精神科病院「神出病院」(神戸市西区)は2日、第三者委員会(委員長・藤原正広弁護士)による調査報告書を公表した。記者会見した第三者委は経営陣が経費削減のため病室にカビが繁殖しても放置するなど患者を利益優先の「道具」として扱ったと指摘。職員に過酷な業務を強いたことが事件の背景にあったとした。事件後に代わった新院長に十分な権限がなく、「改革が進まず新たな虐待が行われる可能性を払拭できない」と指摘した。

看護師ら6人有罪

 神出病院では2020年3月、20~40代の看護師や看護助手だった男性6人が県警に準強制わいせつ、監禁容疑などで逮捕された。3人は懲役2~4年の実刑、残る3人も執行猶予付き判決が確定した。病院は21年9月、外部識者による第三者委を設置して、問題の真相究明をするとしていた。

精神科病院「神出病院」=神戸市西区で2021年6月17日午後1時18分、韓光勲撮影 拡大
精神科病院「神出病院」=神戸市西区で2021年6月17日午後1時18分、韓光勲撮影

 6人は18~19年に男性患者7人に対し、唇にジャムを塗ってキスをさせたほか、全裸の状態でホースで水をかけるなどの虐待をした。

 報告書によると、事件があった病棟は重度の精神疾患の患者ら約60人が入院しており、他の病棟より負担が重かった。夜勤時間帯は看護職員3人で対処し、上司による虐待があったことから、6人も患者への暴行などを始めたとした。

カビ繁殖の病室も

 10年度に就任した大沢次郎元院長は「お気に入りの職員を昇任させる恣意(しい)的な人事」を行い、「絶対的な存在」として君臨。患者数の維持に執着し、他の医療機関での診療が必要な場合も、「患者をとられる」と言って瀕死(ひんし)の状態になるまで院外受診をさせないことがあったという。施設の設備は不具合があっても修繕されず、エアコンの調子が悪いため冬はマイナス2度になり、壁や天井にカビが繁殖した病室もあった。ナースコールや非常ベルも故障したまま放置され、高い薬剤の使用も制限。年間30人以下だった死亡退院数は、19年度は99人となった。第三者委は「大沢元院長にとって患者は道具でしかなかった」と断じた。

 看護職員が患者の異常を訴えても医師が対応しないケースがあったとし、第三者委は「看護師だけが高い倫理観を持ち続けることは困難」とした。

15億円の役員報酬

 利益追求の背景には病院を運営する「兵庫錦秀会」の籔本雅巳前理事長の意向があったとした。籔本前理事長には役員報酬として12~19年度に計約15億円が支払われた。このほか、1回89万円の会食費を含む計約8000万円が交際費として支出され、理事だった籔本前理事長の妻にも21年には月約588万円が支払われていた。第三者委は「医療行為や難解な経営判断をせず、設備の不備を放置することによって生み出された多額の報酬だ」と指摘。病院の修繕などには約17億円が必要だとし、籔本前理事長らに報酬の一部返還を求めた。

 第三者委は21年6月に就任した土居院長について「(病院を)生まれ変わらせようとしている」と評価する。だが、経理に関して十分な権限を与えられておらず、「改革への道のりははるかに遠い。今後も新たな虐待が行われる可能性を払拭できない」とした。

 土居院長は「いただいた提言を真摯(しんし)に受け止め実行する」とコメントを出した。事件を受け、神戸市は大沢元院長の精神保健指定医資格を取り消すよう厚生労働省に求めている。【巽賢司】

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