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ソプラノ歌手・森谷真理さん「私は、音楽と言葉で『何か』を伝える道具」 - 読売新聞オンライン

 現在の日本オペラ界を代表するソプラノの一人、森谷真理が満を持して本格的な歌曲リサイタルに挑戦する。よりパーソナルな表現となる歌曲のステージに臨む意気込みを聞いた。(文化部 松本良一)

 15日までドイツのドレスデン歌劇場の「蝶々夫人」に主役で出演。4月には東京の新国立劇場で「ばらの騎士」に出たばかり。多忙な日程の中でリサイタルに挑むのは、「制約なしに自分の好きな曲を歌いたい」という思いからだ。

 「オペラはいわばお芝居。ほかの人が作った船をみんなでこいでいる。歌曲は自分の世界をピアニストとゼロから作る。風を読んでセーリングしている感じで、私の思いをお客さんに伝えやすい」

 ピアノ伴奏のリサイタルは、オーケストラと一緒に大劇場で歌うのとは違う。だが、音楽を聴き手に伝えるという点は同じだと話す。

 「私は自分を、音楽と言葉で『何か』を伝える『道具』だと思っています」。道具? 「そう。頭で考えてはいけない。それでは何かを表現している『ふり』になってしまうから。表現に余計な理由付けをせず、『何かを歌う』のではなく、語るように声を出すのが理想です」

 音やリズムを正確に、美しく表現しようとすると、歌詞の理解がおろそかになり、良い歌唱にならないともいう。「技巧は自慢するものではないと思う」。だとすれば、言葉の一つひとつに込められた心理のひだをじっくり味わう歌曲に向かうのは自然だ。

 来月のリサイタルでは、マーラーの「リュッケルトの詩による5つの歌」とクララ・シューマンの「6つの歌曲」に、それぞれのパートナーであるアルマ・マーラーとシューマンの歌曲を組み合わせる。「リュッケルト」とクララの歌曲はいま、一番歌いたい曲として真っ先に決めたという。「クララの曲はか弱くないんです。そこが好き」

 聴きどころを尋ねると、困ったような表情になった。「私がそれを言うと、お客さんは『そうなんだ』と思って聴きにいらっしゃる。すると音楽は答え合わせで終わってしまう。それは避けたいんです」。音楽家はあくまで「何か」を伝える存在。その「何か」は聴き手が感じ取るもの、との森谷の強い思いを感じた。

 6月22日午後7時、東京・四ツ谷の紀尾井ホール。ピアノ=河原忠之。(電)0570・00・1212。

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