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<新お道具箱 万華鏡>歌舞伎の鳴物 芝居引き立てる多彩な音:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

愛用の小鼓を打つ傳左衛門さん。「歌舞伎囃子は、脚本と俳優の演技に対して音を付けていく演劇的な要素が多分に求められます」=いずれも国立劇場で

愛用の小鼓を打つ傳左衛門さん。「歌舞伎囃子は、脚本と俳優の演技に対して音を付けていく演劇的な要素が多分に求められます」=いずれも国立劇場で

 歌舞伎は、大道具や衣装など舞台の見た目も豪華だが、音も贅沢(ぜいたく)。新作では録音した音が使われることもあるが、原則、生で演奏されている。

 この歌舞伎の音楽のうち、三味線をのぞいた邦楽器、具体的には小鼓、大鼓、笛、太鼓などを総称して鳴物(なりもの)という。公演チラシなどで目にする囃子(はやし)という言葉も同義語だ。

大太鼓を打つ傳左衛門さん。「黒御簾の大太鼓は、俳優の癖も含め芝居をよくわかっている人が打ちます。小さな連子窓から見えるわずかな俳優の姿を見て、その心理を読み取り音を付けていきます」

大太鼓を打つ傳左衛門さん。「黒御簾の大太鼓は、俳優の癖も含め芝居をよくわかっている人が打ちます。小さな連子窓から見えるわずかな俳優の姿を見て、その心理を読み取り音を付けていきます」

 芝居のなかの風や波、雷などの効果音や、花道の引っ込みの音楽を演奏しているのも鳴物の人たち。鳴物がなくては、歌舞伎という総合芸術は成り立たない。

歌舞伎の効果音として用いる「オルゴール」と呼ばれる楽器。お姫さまやチョウなど美しいものが登場する場面で奏でられる

歌舞伎の効果音として用いる「オルゴール」と呼ばれる楽器。お姫さまやチョウなど美しいものが登場する場面で奏でられる

 歌舞伎囃子方・田中流家元の田中傳左衛門さんに、鳴物の楽器について、話を聞いた。

 「道成寺(どうじょうじ)」や「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」など、歌舞伎の舞踊では、唄や三味線とともに鳴物も舞台の上にずらりと座って演奏する。これを出囃子という。このとき、鳴物を引っ張っていくコンサートマスター的な役割をする楽器がある。小鼓だ。

長唄「勧進帳」。前列左から2人目が立鼓をつとめる田中傳左衛門さん(三響會提供)

長唄「勧進帳」。前列左から2人目が立鼓をつとめる田中傳左衛門さん(三響會提供)

 「舞踊は、俳優と三味線の頭(立(たて)三味線)と小鼓の頭(立鼓)の三者のイキで進行していきます」

 ポン、ポン!とまろやかな音が耳に心地よい小鼓。どんな素材でできているのか。愛用の逸品を見せていただく。

 金輪に張られた丸い革は、馬革。音を共鳴させるための筒(胴)は、桜材。それらを調べ緒と呼ばれる麻の紐(ひも)で組み上げる。調べ緒を左手でつかんで右肩にのせて構えるが、その握り加減で音色はさまざまに変化する。

傳左衛門さん愛用の小鼓の胴。桃山時代の作。黒い小さな布あては、蒔絵(まきえ)を保護し、手の汗を避けるため

傳左衛門さん愛用の小鼓の胴。桃山時代の作。黒い小さな布あては、蒔絵(まきえ)を保護し、手の汗を避けるため

 革は、湿度や気候に非常に敏感。季節や演奏空間の空気の状態によって、生き物のごとく常に変化しているという。

 「劇場内にいても革の感触で、外で雨が降ってきたんだなと、わかります」

 まるで天然の湿度計。それを鋭敏に読み取る感覚にも驚かされる。

 「プロの歌舞伎の鳴物は、三十人に満たない。絶滅危惧種です」

 日本の音の感性がぎっしり詰まった鳴物を未来につなごうと、傳左衛門さんは、国立劇場が行っている研修生制度の講師として、後進育成に携わっている。歌舞伎の世界というと世襲のイメージが強いが、一般家庭からの入り口もある。現在も十代の二人が奮闘中だ。(伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

◆取材後記

 国立劇場の鳴物研修は、傳左衛門さんの母・歌舞伎囃子方九代目田中佐太郎さんが中心となって指導が行われている。「母の稽古は、厳しさのなかに慈悲深さがある」と傳左衛門さん。佐太郎さんの著書「鼓に生きる」(淡交社)には、研修への思いも語られている。

◆公演情報

 十三代目市川團十郎白猿襲名披露「十一月吉例顔見世大歌舞伎」(歌舞伎座)

 鳴物が舞台に登場する演目は昼の部(午前十一時開演)の「勧進帳」。松羽目の舞台に、唄、三味線、そして鳴物の演奏者がずらりと並ぶ。立鼓は傳左衛門さん。本日十四日から予約開始。チケットWeb松竹、または、チケットホン松竹=(電)0570・000・489。

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